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Human iPS cells

Cell 131, 1-12, November 30, 2007
Induction of Pluripotent Stem Cells from Adult Human Fibroblasts by Defined Factors

最新号のCellのImmediate Early Publicationに掲載された上記論文は京大の山中先生の研究グループによるヒトiPS細胞樹立の報告です。以前僕はiPS細胞という記事を書いたことがありましたが、今回彼らはヒトの皮膚線維芽細胞からiPS細胞を樹立することに成功しました。

ヒト線維芽細胞(HDF)はMEFに比べてレトロウイルスの感染効率が低いことは経験的事実です。彼らはGFP導入効率20%以下というHDFの低い感染効率を向上させるため、マウス受容体であるSlc7a1をレンチウイルスによってHDFに導入することでヒト細胞にエコトロピック受容体を発現させた。ウイルス受容体の宿主域を変えることで感染効率を向上させた点ではVSV-Gと同じですが、彼らはこの方法によりHDFの感染効率をMEF並みに上昇させることに成功したと述べています。

36歳の白人女性の顔面皮膚から得られた皮膚線維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4種類の遺伝子をPlatEで産生させたレトロウイルスにより導入し、6日間10%FBS添加DMEMで培養した後にフィーダー細胞上に捲き、その後bFBS添加ES培地で24日間培養することでヒトiPS細胞樹立に成功した。

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Genome Network Project

文科省のゲノムネットワークプロジェクトの一環として当研究室には1万8千を超えるヒト遺伝子に対するshRNAライブラリーが−80℃の冷凍庫に存在します。
プラスミドの状態で保存されているだけでなく、大腸菌のグリセロールストックとしても保存されていて、各遺伝子に対応するshRNAが敷き詰められた96wellプレートが何十枚も重ねられています。
プラスミドはpSuper-retroベクターをベースとしているのでレトロウイルスとして用いることができるだけでなく、一部の遺伝子についてはインビトロジェンのpENTRベクターに組み込まれているのでレンチウイルスとしても用いることができます。基本的に配列は1遺伝子につき1種類だけで、配列のデザインはsiDirectに倣っています。

プロジェクトに参加する研究機関はゲノムネットワークコンソーシアムメンバーとしてこのRNAiライブラリーを利用することができます。プロジェクトの中核的研究機関である理研と国立遺伝学研究所の他、東大を始めとして幾つかの研究機関がコンソーシアムを組織しています。RNAiライブラリーの構築は現在も進行中ですが、主な遺伝子については2年程前に利用可能な状態になりました。けれど国家プロジェクトとして多額の予算を投じて構築された貴重なRNAiライブラリーは未だ本邦で輝かしい研究成果を出していないどころか、国内の研究機関に有効活用されていないのが現状かもしれません。

僕はこれまで研究室で唯一このRNAiライブラリーを用いたスクリーニング実験を行ってきました。以前行っていたテロメアの研究も現在行っているOncogene induced senescenceの研究もいずれもこのRNAiライブラリーを用いて実験系をデザインしています。
今続けているスクリーニングを始めてもうすぐ1年が経ちますが、結構苦戦しています。
苦戦しても最終的にPositive Geneが取れればいいですが、ゴミだけでしたら当然論文にはなりません。

先日ゲノムネットの評価会があり、貧弱な研究内容をボスは発表せざるを得ませんでしたが、ボスはこのスクリーニングに少なからぬ期待を抱いています。
隣室の冷凍庫にRNAiライブラリーがあるとても恵まれた環境にありながら、それを有効利用できずに研究を終わらせたくない。
結果を出す。それがPositiveな結果であってもNegativeな結果であっても確かな実験結果を出すことが大切です。


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Stomach cancer examination

Cancer Sci. 2005 Oct;96(10):713-20
Gastric cancer screening of a high-risk population in Japan using serum pepsinogen and barium digital radiography.

Scand J Gastroenterol. 2007 Jun;42(6):760-4
Reduction in gastric cancer mortality by screening based on serum pepsinogen concentration: a case-control study.

僕の非常勤勤務先の病院がある東京都葛飾区では区の住民健診で胃癌検診として血清ペプシノゲン検査を行っています。
血清中のペプシノゲン値は幽門線から口側に進展する胃粘膜の萎縮性変化を反映して低下することが知られていることから、萎縮性胃炎の診断マーカーとされています。胃癌検診のためにペプシノゲン法を採用する理由は萎縮性胃炎が胃癌のハイリスクグループであるという報告に基づいています。

上記論文はいずれも本邦で行われた研究で、前者の論文はペプシノゲン法とバリウムX線検査を併用した胃がん検診(二段階法)の結果からペプシノゲン法が従来行われていたバリウムX線検査と同等の精度を有することと費用対効果比がバリウムX線検査よりも優れていることを報告し、両者を併用した検診の有用性と合理性を主張しています。後者の論文は13年間の溯及的症例対照研究によってペプシノゲン検査が単独で胃癌死亡率を減少させたと報告しています。

東京都葛飾区は全国で初めて住民健診に二段階法を導入した自治体です。葛飾区保健所が作成したマニュアルではペプシノゲン検査が陽性となると内視鏡検査を行い、陰性だとバリウムX線検査を行うことが推奨されているので、どちらにしても何らかの二次検査を行うことになってしまいます。ペプシノゲン検査も当然偽陰性を避けられないので、陰性だからといって胃癌の存在を完全に否定することはできません。ですからペプシノゲン陰性胃癌を逃さないためにペプシノゲン検査陰性の方にはバリウムX線検査を行うというのが理屈なのですが、僕は以前からその意義に疑問を感じていました。

厚労省三木班がこれまで推奨してきた二段階法を行う根拠となる研究はほとんどが日本語文献に過ぎず、エビデンスが乏しすぎる。また国立がんセンターの有効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインではペプシノゲン法は胃がん死亡率減少効果に関する精度の高い研究がなされていないとして評価を保留されています。

結果は後から評価されるので新しいことを行うためには必ずしも確固たるエビデンスが必要だとは思いませんが、住民健診に採用する以上は優れた疫学調査を求めたい。

最近になって二段階法に代わりヘリコバクターピロリの血清抗体価とペプシノーゲン検査を併用した胃がん検診の有用性が確認されたことから、今後は「一次スクリーニングはヘリコバクターピロリ抗体測定とペプシノーゲン法で行い、二次スクリーニングは内視鏡検査」というHp・PG併用胃がん検診が効率的かつ経済的に胃がん死亡率減少をもたらす胃がん検診になると、厚労省胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーに関する研究班主任研究者であり日本消化器内視鏡学会会長の三木先生は結論づけています。
今後はHp・PG併用胃がん検診が全国に普及することが予想されます。


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Immortalization

Nature. 2007 Aug 16;448(7155):767-74.
The common biology of cancer and ageing.

1951年の冬、アメリカのJohns Hopkins病院で子宮頸癌と診断された31歳の一人の女性患者から培養細胞の研究は始まったと言えるかもしれません。
その女性患者の子宮頸部から得られた生検検体から世界で最初のヒト不死化培養細胞であるHela細胞が誕生しました。

手術や放射線療法もむなしく診断からわずか8ヶ月で永眠した彼女の命日に、Johns Hopkins大学の研究者Marth Geyはアメリカ国営テレビを通じてヒト不死化細胞の培養に成功したことを発表しました。彼は追悼の意を込めて、その細胞の名を彼女の名であるHenrietta LacksからHela細胞と名付けました。1951年10月のことです。

彼女が亡くなってから50年以上経った現在、Hela細胞は世界中の研究で使われています。31歳の若さで永眠した彼女の細胞は彼女が亡き今も世界中の研究所で生き続け、今日の癌研究に測り知れない貢献をしています。

癌細胞の最たる特徴は不死化かもしれません。
シャーレの培地の中で癌細胞は永遠に増殖します。止まることのない細胞周期、制御を逸脱した増殖機序の解明は癌研究の要といえるかもしれません。
正常な細胞はいずれは老化して増殖が止まりますが、癌細胞は不死化します。
この老化と不死化のメカニズムは現在でも未解明な部分が多い。

「細胞老化と癌化のメカニズム」
それが僕が取り組んでいる研究題目です。