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Wnt signal and senescence

Molecular Cell 27, 183–196, July 20, 2007
Downregulation of Wnt Signaling Is a Trigger for Formation of Facultative Heterochromatin and Onset of Cell Senescence in Primary Human Cells

Wntシグナル伝達とsenescenceの関係はおそらく単純ではない。
今年7月のMolecular Cellに掲載された上記論文はヒト正常線維芽細胞において内在性のWnt2がGSK3βによるHIRAのリン酸化を介してsenescenceを負に制御することをVitroで示していますが、この論文と前回紹介したScienceの論文には矛盾する点が少なくない。

Wntの種類によってsenescenceに対する影響は異なる。
Molecular Cellの論文からヒト正常線維芽細胞において内在性のWnt2がsenescenceを抑えていることは確からしい。またWnt5a/bはsenescenceか否かに関わらず転写レベルの発現の変化はないようです。
Wnt1はScienceの論文でK5rtTA/tet-Wnt1マウスを使った実験結果があり、ドキシサイクリン処理によって皮膚のγH2AX染色陽性が確認されています。

Wnt3については両者で結果が異なる。
Molecular Cellでは replicative senescenceがWnt3a conditioned mediumとrecombinant Wnt3aによって抑えられることをSAHFの形成、HIRAのPMLへの移動、BrdU、細胞数で示しています。またRas induced senescenceがWnt3a conditioned mediumとrecombinant Wnt3aによって抑えられることもBrdUで示しています。細胞はWI38を使っています。
Scienceでは主にMEFを使っていますが、Wnt3a conditioned mediumとrecombinant Wnt3aによってsenescenceが惹起されることをBrdU、SA-βGal染色、免疫染色(HP1α/γH2AX/53BP1/p-ATM)、増殖曲線によって示しています。またWI38でもWnt3aによってsenescenceが惹起されることを増殖曲線と免疫染色(HP1α/γH2AX/53BP1/p-ATM)で示しています。

同じ細胞(WI38)を使った実験でも両者で結果が異なる。
実験上の違いとしてはWnt3aの濃度がScienceでは10-30ng/ml、Molecular Cellでは50-75ng/mlであることと、細胞年齢がScienceではP12-22、Molecular CellではPD43-65であることくらいです。

Molecular CellではSupplemental Figureの最後にβ-cateninによってWI38の増殖抑制が認められることをBrdUで示した図を載せていますが、この説明としてはDiscussionの中でWntシグナルとsenescenceには複合的経路が存在するようだという記述をしているのみです。

研究者は常に真実を追求していますが、何年か実験を続けていると真実というのは畢竟するところ歴史にしか証明され得ないように思う時があります。
実験結果を変えうる様々な要因をどれだけ把握できるか、再現性を得るにも失うにもこの知識が実験科学者の力量ではないかと思うことがあります。

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