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Wnt signal and aging

Science 317, 803 (2007)
Augmented Wnt Signaling in a Mammalian Model of Accelerated Aging

Klothoという遺伝子のノックアウトマウスは早期に老化現象が現れるマウスとして知られています。この特徴的な表現型に潜むメカニズムに迫る論文が今月初めのScienceに掲載されました。

Klothoノックアウトマウスでは皮膚や小腸等の組織でstem cellやprogenitor cellの数が減少し、代わりにsenescence cellが出現していることを確認し、293細胞でKlothoとWnt3の発現分布が重複していることを発端にKlothoがWntシグナルと相互作用することを証明し、TOPGALマウスとの交配によりKlothoノックアウトマウスの組織でWntシグナルが亢進していることを示し、最後にWntシグナルがcellular senescenceを惹起することをvitroとvivoで示しています。

簡単に言うと、KlothoはWntシグナルを抑えていて、KlothoがなくなるとWntシグナルが亢進してcellular senescenceになり、それが個体の老化促進に寄与しているようだという内容です。KlothoとWntシグナルとsenescenceをvitroとvivoで見事に結びつけたこの研究はScienceに掲載されるだけの大きな業績だと思います。

Wnt signalとsenescenceに関する論文は僕が渉猟する限り2001年のEMBO以外に報告がありませんでしたが、先月のMolecular Cellに続いて今回の論文が発表されました。Wnt induced senescenceという新しい概念は僕が現在進めている研究でもあり、今回発表された論文のFigureの幾つかは僕の出している結果と重複しています。
今回の論文の紹介を通じてボスを交えてDiscussionをしなければいけません。

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Membranous nephropathy

Kidney Int. 2007 May;71(9):841-3.
Membranous nephropathy: when and how to treat.

Am J Kidney Dis. 2005 Dec;46(6):1012-29.
Idiopathic membranous nephropathy: outline and rationale of a treatment strategy.

膜性腎症の治療については現在も様々なトライアルがなされていて、コンセンサスを得た治療法は依然として確立されていませんが、現在までに少なからぬエビデンスが蓄積されています。

現在日本の治療指針としては厚労省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班が2002年に報告した「難治性ネフローゼ症候群(成人例)の診療指針」が知られています。この中で膜性腎症に対する治療指針としてステロイド単剤で治療を開始することが記載されています。ステロイド単剤治療群とステロイド+シクロフォスファミド併用治療群と非使用群の3群(合計847例)を対象にした後ろ向き研究において非使用群に比してステロイド単剤群が有意に予後が良好であり、ステロイド単剤群とステロイド+シクロフォスファミド併用群の間に予後の有意差が認められなかったことがその根拠になっていますが、海外ではステロイド単剤治療が無効であるという報告や免疫抑制剤とステロイド併用療法の有効性を主張する報告が蓄積されるにつれて、ステロイド単剤治療は無効とのコンセンサスが既に形成されつつあります。

多種の免疫抑制剤が導入される中で現在最もコンセンサスが得られている治療法はステロイド+クロラムブチル/シクロフォスファミド併用療法と思われますが、確固たるエビデンスは乏しく、MMF、シクロスポリン、タクロリムス、ACTH、リツキシマブ、アザチオプリンなどを使用した新たなトライアルが進行中の現状を鑑みるとコンセンサスの確立にはまだ遠い印象を抱きます。

日本の治療指針でもこの状況を考慮して「ステロイド療法を主療法として免疫抑制剤を積極的に併用する」との記載をしていますが、ステロイド単剤治療が有効であったという報告は先の厚労省の報告を除いて海外の論文に見つけ難く、現時点ではステロイド単剤治療を行う科学的根拠は非常に乏しいと言わざるを得ません。

上記2論文は最近のレビューとして参考になります。また「難治性ネフローゼ症候群(成人例)の診療指針」は日本腎臓学会のホームページからダウンロード可能です。