Cancer Sci. 2005 Oct;96(10):713-20
Gastric cancer screening of a high-risk population in Japan using serum pepsinogen and barium digital radiography.
Scand J Gastroenterol. 2007 Jun;42(6):760-4
Reduction in gastric cancer mortality by screening based on serum pepsinogen concentration: a case-control study.
僕の非常勤勤務先の病院がある東京都葛飾区では区の住民健診で胃癌検診として血清ペプシノゲン検査を行っています。
血清中のペプシノゲン値は幽門線から口側に進展する胃粘膜の萎縮性変化を反映して低下することが知られていることから、萎縮性胃炎の診断マーカーとされています。胃癌検診のためにペプシノゲン法を採用する理由は萎縮性胃炎が胃癌のハイリスクグループであるという報告に基づいています。
上記論文はいずれも本邦で行われた研究で、前者の論文はペプシノゲン法とバリウムX線検査を併用した胃がん検診(二段階法)の結果からペプシノゲン法が従来行われていたバリウムX線検査と同等の精度を有することと費用対効果比がバリウムX線検査よりも優れていることを報告し、両者を併用した検診の有用性と合理性を主張しています。後者の論文は13年間の溯及的症例対照研究によってペプシノゲン検査が単独で胃癌死亡率を減少させたと報告しています。
東京都葛飾区は全国で初めて住民健診に二段階法を導入した自治体です。葛飾区保健所が作成したマニュアルではペプシノゲン検査が陽性となると内視鏡検査を行い、陰性だとバリウムX線検査を行うことが推奨されているので、どちらにしても何らかの二次検査を行うことになってしまいます。ペプシノゲン検査も当然偽陰性を避けられないので、陰性だからといって胃癌の存在を完全に否定することはできません。ですからペプシノゲン陰性胃癌を逃さないためにペプシノゲン検査陰性の方にはバリウムX線検査を行うというのが理屈なのですが、僕は以前からその意義に疑問を感じていました。
厚労省三木班がこれまで推奨してきた二段階法を行う根拠となる研究はほとんどが日本語文献に過ぎず、エビデンスが乏しすぎる。また国立がんセンターの有効性評価に基づく胃がん検診ガイドラインではペプシノゲン法は胃がん死亡率減少効果に関する精度の高い研究がなされていないとして評価を保留されています。
結果は後から評価されるので新しいことを行うためには必ずしも確固たるエビデンスが必要だとは思いませんが、住民健診に採用する以上は優れた疫学調査を求めたい。
最近になって二段階法に代わりヘリコバクターピロリの血清抗体価とペプシノーゲン検査を併用した胃がん検診の有用性が確認されたことから、今後は「一次スクリーニングはヘリコバクターピロリ抗体測定とペプシノーゲン法で行い、二次スクリーニングは内視鏡検査」というHp・PG併用胃がん検診が効率的かつ経済的に胃がん死亡率減少をもたらす胃がん検診になると、厚労省胃がんスクリーニングのハイリスクストラテジーに関する研究班主任研究者であり日本消化器内視鏡学会会長の三木先生は結論づけています。
今後はHp・PG併用胃がん検診が全国に普及することが予想されます。