Nature Genetics. 39, 730-732 (2007)
Tissue-specific transcriptional regulation has diverged significantly between human and mouse
今月のNature Geneticsに掲載された上記論文は大変面白い。
生命の進化の過程で保存された転写調節メカニズムは異種間の転写因子の標的配列の相同性に準じると多くの人は想像するかもしれません。
同じ転写因子であればマウスとヒトで結合遺伝子は同じだろうか。結合部位は同じだろうか。異種間で保存されたアライメントに準じて結合するだろうか。
答えはNoである。
それをこの論文は検証した。
進化的に保存された同じ転写因子であっても結合が異種間でかなり異なることを示したこの論文は同じほ乳類としてヒトの代用を果たしているマウスの研究結果に再考を迫るだろう。
方法はChIP-on-chipです。
まずカスタムメイドのマイクロアレイですが、彼らは4000種類以上のヒトとマウスのオーソログ(異種間相同遺伝子)に対して転写開始点前後5kbの範囲で60merのオリゴヌクレオチドをプローブとして設計した。
抗体は4つの転写因子(FOXA2,HNF1A,HNF4A,HNF6)を用い、細胞はヒトとマウスの肝臓からそれぞれ単離した初代肝細胞を用いた。
結果はこれらの転写因子が結合するオーソログの実に41-89%がヒトとマウスで異なるという驚くべき結果だった。つまり同じ転写因子であってもその結合遺伝子の41-89%は種特異的である。
またHNF6についてヒト初代肝細胞と不死化ヒト肝細胞株であるHepG2を比較したところ、結合オーソログの66%を共有したのに対して、マウス初代肝細胞とは26%しか結合オーソログを共有しなかった。つまり異種間の違いは初代培養細胞と不死化細胞株という同種間の違いよりも大きい。
異種間の結合パターンの違いは転写因子のDNA結合特異性の違いに起因するのではなく、蛋白モチーフに合致した配列の有無と強く相関することをTHEMEアルゴリズムで示した後に、結合する場合も結合部位は種間でかなり異なることを示しています。すなわち 同じ転写因子の結合部位をヒト-マウス間で比較した結果、約2/3でアライメントの一致が認められず、結合部位はヒト-マウス配列アライメントからだけでは予測できないことを示しています。
ヒトとマウスにおけるこの違いは転写因子結合部位の高い可動性を意味します。この転写因子結合の高い可塑性は異種間で保存された領域が機能的に重要だという前提の方法論であるファイロジェネティックフットプリンティングにも再考を迫る論文ではないかと思います。