Archive for May, 2007

IgACE study

May 29, 2007

J. Am. Soc. Nephrol. Jun 2007; 18: 1880 – 1888.
IgACE: A Placebo-Controlled, Randomized Trial of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitors in Children and Young People with IgA Nephropathy and Moderate Proteinuria

European Community Biomedicine Concerted Action Project [BMH4-97-2487(DG 12-SSMI)]の一環としてIgACE European Collaborative Groupによって行われた前向き研究で、Clinical Trials on Medicines for Children (DEC-NET)にも登録されています。

中等度の蛋白尿を伴うIgA腎症の若年患者を対象にACE阻害薬の効果を検証したPlacebo-Controlled無作為二重盲検試験で、今月のJournal of the American Society of Nephrologyに掲載されました。

対象としたのは腎生検にてIgA腎症と診断された3−35歳の若年者で中等度(1-3.5g/day per 1.73m2)の蛋白尿を示しかつ正常か軽度の腎機能低下(Ccr>50ml/min per 1.73m2)を示す患者です。140/90以上の高血圧を伴う成人やステロイド治療を受けた患者は除外されています。クライテリアを満たし実際の試験対象となったのは9-35歳の患者66人で、用いられたACE阻害薬はベナゼプリルです。

平均35ヶ月のフォローアップデータではACE阻害薬群は偽薬群に比してCcrと蛋白尿いずれも有意な有効性が確認された。蛋白尿はACE阻害薬開始後1年以内に著明に減少することも確認された。
Primary end pointとされたのはCcr:30%以上の腎機能増悪を示した場合で、偽薬群では5/34人であったのに対してACE阻害薬群では1/32人だった。
Secondary end pointとされたのは二つあり、一つはCcr:30%以上の腎機能増悪を示すかあるいは3.5g/day per 1.73m2以上までの蛋白尿を示した場合であり、この場合ACE阻害薬群では1/32人に対して偽薬群では9/34人と明らかな差が認められた。またCox解析によりACE阻害薬は独立した予後規定因子であることが確認された他、性別、年齢、血圧等の因子は腎障害の進行と相関が認められなかった。
もう一つのSecondary end pointは6ヶ月以上にわたり0.5g/day per 1.73m2未満の部分的蛋白尿寛解を示すか160mg/day per 1.73m2未満の蛋白尿完全寛解を示した場合であり、この場合部分的蛋白尿寛解はACE阻害薬群では13/32人に対して偽薬群では3/34人、完全蛋白尿寛解はACE阻害薬群では12/32人に対して偽薬群では0/34人となり、いずれにおいてもACE阻害薬の有効性が確認された。

Scr≦1.5 mg/dlかつ蛋白尿≧0.5 g/dのIgA腎症の成人患者を対象にした前向き無作為比較試験は過去にも行われており、血清Cre値と尿蛋白量をエンドポイントとしてACE阻害薬の有効性は確認されている[J Am Soc Nephrol 14: 1578-1583, 2003]。

ステロイド治療と同様にIgA腎症に対するACE阻害薬の有効性は確立されつつある。

NKF-KDOQI Guidelines

May 16, 2007

American Journal of Kidney Diseases, February 2002
Clinical Practice Guidelines for Chronic Kidney Disease:  Eval uation, Classification and Stratification

腎不全患者の腎機能評価にあたりGFRの推定は必須です。
NKFガイドラインでは成人の場合MDRD式とCockcroft-Gault式によるGFRの推定を奨励しています。
MDRD式GFR計算式は少し複雑ですが、関数電卓を使えば問題ありません。
NKFのホームページでは必要な値を入力すれば自動的にMDRD式GFRを計算してくれるGFR Calculatorを公開していますが、日本人に対するModificationは考慮されていません。日本腎臓学会ではMDRD式に日本人係数0.881を掛けると相関が良いことを報告しています。血清クレアチニン値は酵素法の場合、その値に0.2mg/dlをたすことも注意が必要です。
MDRD式GFRは2002年のガイドラインで発表されたにもかかわらず依然として本邦では認識が浅い。

National Kidney Foundation(NKF)は大変充実した最新のclinical practice guidelinesをホームページで公開しています。
腎不全の治療にあたる全ての臨床医はこのガイドラインを十分に活用する必要があります。
内容は素晴らしい。
http://www.kidney.org/professionals/KDOQI/guidelines.cfm

Ras intensity

May 16, 2007

Nature Cell Biology. 2007 May, Volume 9 No 5
Dose-dependent oncogene-induced senescence in vivo and its evasion during mammary tumorigenesis

テトラサイクリン濃度依存的にH-RasV12の発現量を変化させることを可能にしたトランスジェニックマウスを用いて、マウス乳腺における組織学的変化とoncogene induced senescenceを評価した論文です。
少し難解な論文ですが、Oncogenic Rasの発現量の違いによる効果をvivoで評価した価値ある論文です。

Oncogenic Rasの発現量の大小によって乳腺発育の表現型に明らかな差が認められ、その表現型をoncogene induced senescenceで説明しています。次に低レベルのOncogenic Ras発現によって最終的に形成される乳腺腫瘍のRas発現を組織学的に評価することでspontaneousなRas発現上昇が腫瘍形成過程に重要であり、spontaneousなRas発現上昇によるsenescenceが破綻することで腫瘍化が進行するというステップをvivoで示唆しています。

テトラサイクリン中止後にsenescenceを起こしたはずの細胞が増殖を再開する結果に対する考察は興味深い。Rasにより可逆的細胞周期停止と不可逆的細胞周期停止の両方が起こり、senescenct cellは増殖を再開しないが、Non senescent cellはRasのdown regulationによって増殖を再開するというsuggestionをもってこの論文は結ばれています。
Senescenceは基本的に不可逆的な細胞周期停止なので、最終的にそれに矛盾しない示唆を与えてはいますが、Oncogenic Ras発現上昇によって生じたNon-senescent cell cycle arrest cellについての記述はDiscussionに委ねられています。Stem cellやProgenitor cellはOncogenic Rasによるanti-proliferative/pro-senescenceな状況下でも生き残り、再び増殖する可能性を秘めているというモデルを支持するとDiscussionには書かれています。