Nature. 1970 Jun 27;226(5252):1211-3.
RNA-dependent DNA polymerase in virions of Rous sarcoma virus.
Temin HM, Mizutani S.
僕の研究室のボスはよく逆転写酵素を発見したHoward. M. Teminの話を挙げます。
セントラルドクマを覆した科学史の大きなパラダイムチェンジである逆転写酵素の発見にはサイエンスの常識に対峙する一人のサイエンティストの固い信念があったに違いありません。
科学史を顧みると、砂丘に埋もれた宝石を探すような途方もない努力の中で奇跡的に宝石を見つけることができたほんの一握りの科学者が歴史に名を刻む一方で、数多の科学者が砂丘に身を投じて二度と陽を見ることなく埋もれていったことを僕らは想像することができます。
信念と忍耐は科学者に必要な条件かもしれませんが、方向や手段を誤れば永遠に光を見ることはできません。
サイエンスは海図のない大航海時代に似ているかもしれません。
地図があるから進むのではありません。研究は未知への航海です。その先に大陸があると誰が断言できるでしょうか。
重要な舵取りの判断で研究者の運命は決まるとボスは言います。けれどその判断は難しい。
最初の癌抑制遺伝子であるRbの単離やインスリンの発見は砂丘に埋もれた宝石の発見と例えることができるかもしれません。科学史上の大発見には運があったと後世の人々は言うことができるかもしれません。
けれど科学的根拠に基づいて研究者自身が描いた海図をどんな不安な状況でも離さなかった信念があったことは大発見にも共通する事実かもしれません。